バクテリアのウソホント:クアランティン・・・リセットをしない為に

◆病気が出たのでリセットした


答え: 間違い
もちろん病気が映画に出てくるような凄いウイルスとかなら別ですが
基本的に常在菌関係はリセットしても無駄なので
水槽の中に築かれた生態系を維持するほうが重要です。
 

◆何年もリセットをしていないと病気が出にくい


答え: 正しい
これも重要な事ですが
水槽の中を小さな地球のように考えてみてください。
時間の経過と共にどんどん複雑な進化をしていくので
数年後には立ち上げ当初とは比べられない安定環境になります。
これこそが金魚が最強の状態を維持するのに最も重要な
ストレスフリーな環境なので病気も出にくくなります。
詳しくは記事にてご確認ください。

日本のアクアではリセットという言葉が存在し気軽に行われている気がします。
ここで、たとえば環境汚染が進んだ川や海をリセットしないのは何故かを考えて欲しいと思います。
もちろん大きすぎて出来ないという事もありますが、自然の池でもリセットはしません。
これはそこに住む生態系を破壊するからです。
想像し難い方は、地球をリセットする事を考えてみてください。
人類はおろか、全ての動植物が居なくなった状態でまた細菌類からすべてスタート
そうなれば地球に人類が誕生して今のような高層ビルが立ち並ぶまで何年かかるでしょうか?

水槽でも同じなんです。
あまり知られていませんが、水槽に増えるバクテリアは
アンモニアや亜硝酸塩を分解するバクテリア以外に
何百、何千、何万(実際どれくらい居るかは判明していないそうです。この記事投稿までにおよその数字を探そうとしましたが見つけられませんでした。)という種類のものがその環境に応じて徐々に発生し水槽ごとにDNAや指紋のように違う組みあわせのバクテリア群が微妙なバランスを取りながら刻々と温度変化や水質変化に合わせて入れ替わっているんです。
ですので立ち上げ直後はバクテリアの数だけでなく バクテリアの種類が少ないのでとても不安定ですが
時間の経過と共に 徐々にいろいろな種類の物が発生し問題を解決してくれたり、2次的、3次的にメインのバクテリアの仕事をサポートしてくれます。

突然ですが、漬物を漬ける ぬかどこ がこの水槽と同じです。 その家によってその家の味がある、毎日かき混ぜて酸素を送る、そのかき混ぜる人の手に付いているバクテリアでぬかどこのバクテリアも変化し味が変わる、作りたてはとげがあるけど徐々にマイルドになる・・・など
他にも老舗のうなぎ屋さんの秘伝のたれ(創業当時から毎日新しいたれを足して混ぜて熟成していく) など、食品関連では歴史的に昔からこのバクテリアの熟成を上手に利用しているケースがあります。

ここでほぼイメージは出来たと思いますので水槽に戻りますが
水槽内でもこのような 熟成 が行われているので、リセットすればまた一から熟成しなければいけません。
どうしても話がろ過バクテリアばかりに集中しているように感じますが、
1ヶ月程度で出現するろ過バクテリアよりも
この名も無いバクテリア群を失う事のほうが重大な損失なんです。
何と言ってもこれは水槽飼育の最大のメリットの1つですので
それを些細な病気が出たからと、
文字通りドブに流してしまうのは勿体無いです。

およそですが、
立ち上げから半年くらいで徐々に安定しだし、
数年経過すればかなり強固にこのバクテリア群の複雑な構成が成熟します。
俗に言う 病気の出にくい強い水が出来るようになります。
ただし、これはバクテリア側からの視点ですので、
逆サイドである水そのものが汚染されていては強い水にはならず
単なる汚い水とか、住みにくい水になります。
ですので僕達、水槽飼育者は 
◆適度に水を換える
◆しっかりエアレーションする
という2つの後方支援をして僕達が望んでいるバクテリアたちが
常にメインの座に居るようにコントロールしていかないといけません。

ということで、僕はリセットには反対という立場をとっています。
こうした知識がつき出してからは一度もリセットしていませんので
最近では大きな病気も出ない安全な環境が手に入りました。
すでに記事でお伝えしたように水換えさえすればその中で 
薬も使わず尾腐れや赤班病を治療できるレベルの安定感があります。
これは薬のようなヒーリング効果があるのではなく、
金魚が本来の力をフルに出して自力で回復できるほどの安定した環境だからです。
安定したストレスフリー環境こそが病気の出ない最良の飼育環境です。
決してバクテリアが薬の代わりになるのではありません。
特に室内で水槽飼育されているならこの恩恵はかなりでかいと思います。
なにしろ、温度などは安定させやすいですし
ろ過も十分なものを確保しやすいからです。

<厳密には洗うだけではリセットはできません>
便宜上、僕もリセットという言葉をよく使っていますし、
これからも使いますが、実際のところ リセットは出来ません。
常在菌を全て居なくする事は不可能ですし、その他の細菌類でも
スポンジやナイロンたわしで洗うだけでは全く意味がありません。
これは例えるなら、部屋に埃がたまってきたからと、
ショベルカーで掃除するようなものです。
細菌のサイズを考えれば、スポンジとかで洗う事は意味がありません。
また除菌系の薬剤でも確認していただけば全て99.9%除菌と書かれているはずです。
100%除菌は無理だからです。 
本気でリセットが必要な時は水槽や ろ過装置、全て焼却処分し、魚まで安楽死させないとリセットは出来ません。
ですので通常リセットと呼んでいる行為は ろ材内のバクテリアを弱めるだけの行為になります。
病気が出たら原因菌を駆除したいと思われると思いますが、最も効果的なのは正常なバランスに戻す事でありリセットではありません。
また常在菌に関しては金魚が普通の健康状態になれば感染する事もほぼなくなります。

▲昔ながらの荒塩で除菌する方法
完全な除菌は出来なくても
普通の病気はこの程度の処理で十分安全と考えられています。

常識の範囲を超えた、SciFi映画に出てくるような驚異的なスピードで繁殖するようなバクテリアが出てくれば、その時は残念ですが焼却処分しかありません。

<でも、でも、でもリセット>
そうは言っても立ち上げ初期の不安定な時期にはついリセットしてしまいます。
飼育経験もあまり無く、細かな事を判断できないので 僕もよくリセットしました。
これはこれでOKです。 何故なら最初の頃はさほどバクテリアの種類も居ませんし
無理に環境を温存するより一度全て綺麗に洗浄して新たにスタートするほうが楽だからです。
またミスで原因の除去が不確実で再発させる可能性も減ります。
そして一度でも立ち上がっていればタネが居るからろ過バクテリアも直ぐに出てくるので
2回目、3回目の立ち上げは徐々に楽に出来た記憶があります。
ですのでこのようなケースなら思い切ってリセット(少なくとも僕達がそう呼んでいる行為)を行ってください。

<クアランティン>
で、最後になりましたがリセットせずにクアランティンする事をお勧めしたいと思います。
これは簡単に言えば 問題を解決する、病原菌などを無力化する ということで 浄化 という意味です。
難しそうですが、基本的には特別何かをするという事ではありません。
洗浄などで清潔にするだけです。
※池などの場合は、マゾテンのような薬剤を散布する事もクアランティンに分類されるようです。
 これは環境へのダメージが限定的で薬剤が太陽光で自然分解されるため
 問題をなくして 浄化 のみを行うからです。
 薬の種類はあまり詳しくないですが、
 水槽に入れてもバクテリアへのダメージが少なく
 自然分解するものなら同じように考えていただいて構いませんが、
 そのような製品があるかどうかは不明です。

(尾腐れ病・赤班病)
これは水質悪化により発病するものですのでまずはその原因の除去が重要です。
基本的に水換えを怠っていたり、ろ材などのメンテナンスが悪くカビや腐敗物質が何処かに残っていたりする事が多いので
まずは、腐敗物質が無いか? フィルター内、ろ過装置内、底砂内などを全て清掃してください。
問題のレベルによっては魚を出して、水も全て入れ換える必要がありますが 腐敗物質が大量に出た場合などは水は半分くらい戻しても健全化させられます。
長期的に考えるとここで一旦全てを清潔にして仕切りなおすほうが後の安定に寄与します。
ここで中途半端な対応を行うと、また1ヵ月後に同じような問題が出ると思いますので注意してください。
※簡単な水換えだけで収束する事も多いですし、それでは再発する事も多いので判断は難しいですが清潔と呼べる環境に戻せばうまく行きます。
またこの病気は金魚のコンディションが大きな要因で元気ならかなりの劣悪環境でも発病しませんので
水質以外に金魚にストレスを与える要因が無いか?調べたほうが安心です。
例)
他の金魚によるイジメ
過度な水流
エアレーションの不足
過度な温度の急変
飼い主が構いすぎる
・・・・等、他にもいろいろあります。

(白点病)
これは清掃ではクアランティンできないので
一度勢力を拡大されてしまったら
卵からシストから何から全て駆除する必要があります。
これは水槽内にメチレンブルーをドバドバ入れるのではなく
生体を水槽の外に出して外部でメチレンブルー浴しながら
空になった水槽内で卵を孵化させる方法でそれぞれ別々に駆除します。
僕はあまり経験がない病気ですがこの方法でバクテリアへのダメージを与える事は生体の除去(アンモニア源の減少)のみでそれ以外は何もせず全滅させられました。
つまり本水槽に薬を入れずに駆除できます。
(→)白点病
同じく金魚の体調により寄生されてしまうケースですので他のストレス要因
特に 過度な温度変化 や 古株によるイジメ が無いか確認してください。

<この記事を読む前に既に薬を本水槽に入れてしまった方へ>

この場合は全ての水を換えるべきか?
そのまま通常のメンテナンスの水換えで対応すべきか?
の判断を迷われると思いますが、
1つの判断基準は 薬が自然分解するタイプかどうか?です。
池に使う薬の多くは太陽光で自然分解するように作られていますので
太陽光が入る環境に水槽があればそのままろ材などの清掃だけしておけば元に戻せます。

もしそのことが不明な場合、分解されないと分かっている場合は
念のため全ての水を捨てて 新しい水に換えるほうが安心です。
この場合は少なくとも数日は生体を入れずに空回しして水をバクテリアと馴染ませてください。
清掃でろ材内のバクテリアも激減してダメージを受けていますし、水は全て新しいので
生体を加える時は1匹だけ戻して可能なら2週間おきに追加してください。
邪魔臭いですが、出戻りや失敗の少ない安全な方法です。
餌は全てのメンバーが入って1週間経過するくらいまで 極少量でキープすると水が濁るのも予防できます。
しかし生体が痩せすぎる問題が出る事もありますので、その場合は追加を遅らせて1匹だけ入れてえさを普通に与え、濁らないように注意しながら追加していく方法がベストですがこの場合2週間ではバクテリアの増加が間に合わないかも知れませんので必ずアンモニアの検査だけは行ってください。
残りの生体はバケツなどで飼育しながらろ過ではなく水換えで水質管理して維持してください。